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「トリック、オア」feat.Hotel Desire一人目の話
夜、外出から帰ってきたトワが抱えていたのは、買い物袋とお菓子の入った包みだった。シズクが驚く位にはお菓子を大量に抱えている。
「えっ、どうしたのそれ。薬草とか、器具を買いに行ったんじゃなかったの?」
「ああ、何か……ハロウィン? とかっていうイベントらしくて。買い物したら、お菓子もどうぞってさ。沢山貰っちまった。……食う?」
ほら、と差し出したのは、棒つきキャンディだった。ちょうど二本あったので、トワもフレーバー違いのものを開封して咥えた。
ひとまず受け取って開封し、キャンディを咥えるシズク。
「……美味しい。いちご味だ」
いちごの味わいに満足したところで、トワのキャンディのフレーバーが気になった。気になる、無性に気になる。食べたい。とても食べたい。
「……トワのキャンディもちょっと食べていい?」
きゅぽん、とトワが咥えていたキャンディを奪い、口にする。一気に広がるスッとした風味。シズクの舌には合わない、ハッカ味だった。
「うぇぇ……からっ」
その反応が少しだけ面白くて、苦笑するトワ。そこでようやく二人とも気付いた。――意図せず、間接キスしちゃったじゃないか、これ。
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