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「僕の、髪。彼の、しごと」feat.菜の花が咲く前に
いつものように、響に髪を梳かされながら芽以はぽつりと漏らした。
「髪、切っちゃったほうが良いかな」
その言葉に緩く微笑みながら、響は首をかしげる。
「何かありましたか? 手入れが大変でしたら、私が手伝いますよ。芽以の髪は本当に綺麗ですから」
「そ、そうじゃなくて。毛先も傷んだりするし、乾かすのは大変だし……。維持するのって大変なんだよね」
だけどさ、と芽以は言葉を繋げる。
「……響がこうして梳かしてくれるし、自分でも気を付けてるから何とか維持できてるけど……。こうしてずっと伸ばしっぱなしっていうのもなぁ、ってちょっと思って」
しばらくの沈黙。その間も、響は芽以の髪を梳かしている。
「……私がどうこう言える立場ではないのでしょうけど、お客様からも芽以の髪は美しいのだと言われていますし」
「客からの評判は別にどう思われてもいいや。……良いに越したことはないんだろうけどさ」
「では、私個人の意見を述べさせてもらいます。私は、芽以の髪が好きですよ。艶やかで、手入れすれば手入れするほど美しくなる。期待に応えてくれる貴方の髪は本当に愛おしいんです」
そこまで褒められるとさすがに気恥ずかしいのか、芽以は顔を赤らめる。
「なっ、そ、そこまで褒めなくてもいいよ……でも」
目を伏しくすりと笑い、芽以は髪を一束取りさらりと撫でた。
「そこまで言うならば、このままでいようかな」
彼が、そう言うのなら悪くないんだろうから。 (了)
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