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「たすけて先生!」feat.ペット症候群の君へ
壮の経営している絵画教室に、注文していた教材や画材の類が届いた。それは大いに良かったのだが……。
「……どうして業者のあなたが空腹で倒れるんでしょうか」
配達に来た青年が、空腹が原因で盛大に目の前で気を失ったものだから呆れる他無かった。
「す、すみません、ごめんなさい……。あ、このクイニーアマン美味しいです。それで、そこにあるおにぎりは……」
「はぁ……、もう、そっちも食べていいですから。このことは別に苦情出さないから、食ったら早く仕事に戻った方が良いですよ」
変なところで人が良いのも大概だな、と内心苦笑しながら青年の旺盛な食欲を見届けていた。後で食べようと買った食料たちは、あっという間に青年が咀嚼していく。
ふと彼の首を見ると、犬にでもつけるような赤い首輪が巻かれているのに気づく。何だろう、と少しだけ詮索したい気もしたがそれを全力で振り払う。深入りは、いつだって禁物なのだから。
「オレ、日雇いでなんですけど肉体労働って大変ですね、たはは」
そう言いながら青年は、興味津々の眼差しでぐるりと教室を見渡す。
「ここ、絵画教室ですよね? いいなぁ、オレも絵描きたいな……」
「絵に興味があるんですか? うちはいつでも受講生募集中ですから。見学とかはいつでもどうぞ」
その言葉にワンテンポ置いて、青年はふわりと微笑む。
「ありがとうございます。いつか……思いっきり絵を描けたらいいなって思います。じゃ、ご馳走様でした。失礼します」
青年の背を見送ったところで、壮は気付いた。あいつ、全部平らげてった。また買いに行かないとな、と苦笑する。 (了)
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