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「それでも、君は」Feat.Hotel Desire二人目の話
「なぁ。なんでお前っていつもそんな感じなの? 何て言うか……穏やかなのな。で、どうなのよ?」
ふと疑問に思い、ラムスは売店で店番中のライに問いかける。
「仕事中ですから答えられませんーってのは無しで。ほら、答えてみろよ」
その問いにライは、相変わらずの困ったような笑みを浮かべながら、漠然とした問いに答える。
「ええと……、何ででしょうね。笑ってた方が、何事も上手くいくような気がするンですよ」
「それで上手くいったこと、あったのかよ?」
「うーン……。気分的な問題ですよ。笑っていたらいつか報われるンじゃないかとか、辛くても笑顔を忘れちゃいけないとか。単なる心がけみたいなものです。報われたら幸せだな、程度の感覚ですよ」
その『心がけ』だけで上手くいくわけは無いことぐらい、ラムスも十分知っていた。自分にだって、ライのように思っていた時期くらいあった。結果、笑っているのが辛くなって最終的には笑っていることをやめた。笑っているだけじゃ何も変わらない。かといって、どうすればいいのか分からない。自分から仕掛けた質問だというのに、頭が痛くなってきた。思わず眉間に皺が寄っていることに気付く。
「ラムス様。すみませン、説教くさかったでしょうか……」
また、ライを困らせた。それが楽しい反面、ほのかな罪悪感がじわりと湧いてきた。
「……別、に。あぁ、違う話でもしよう……」
インクのにじみのようなこの罪悪感は、一体なんなのだろう? (了)
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