8 / 8

「それでも、君は」Feat.Hotel Desire二人目の話

「なぁ。なんでお前っていつもそんな感じなの? 何て言うか……穏やかなのな。で、どうなのよ?」  ふと疑問に思い、ラムスは売店で店番中のライに問いかける。 「仕事中ですから答えられませんーってのは無しで。ほら、答えてみろよ」  その問いにライは、相変わらずの困ったような笑みを浮かべながら、漠然とした問いに答える。 「ええと……、何ででしょうね。笑ってた方が、何事も上手くいくような気がするンですよ」 「それで上手くいったこと、あったのかよ?」 「うーン……。気分的な問題ですよ。笑っていたらいつか報われるンじゃないかとか、辛くても笑顔を忘れちゃいけないとか。単なる心がけみたいなものです。報われたら幸せだな、程度の感覚ですよ」  その『心がけ』だけで上手くいくわけは無いことぐらい、ラムスも十分知っていた。自分にだって、ライのように思っていた時期くらいあった。結果、笑っているのが辛くなって最終的には笑っていることをやめた。笑っているだけじゃ何も変わらない。かといって、どうすればいいのか分からない。自分から仕掛けた質問だというのに、頭が痛くなってきた。思わず眉間に皺が寄っていることに気付く。 「ラムス様。すみませン、説教くさかったでしょうか……」  また、ライを困らせた。それが楽しい反面、ほのかな罪悪感がじわりと湧いてきた。 「……別、に。あぁ、違う話でもしよう……」  インクのにじみのようなこの罪悪感は、一体なんなのだろう?         (了)         

ともだちにシェアしよう!