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第14話
「日本で言うところのサプライズ? のつもりだったんだよ。ほら、日本人って夏にホラーを見るらしいし」
悪びれた様子もなく、アーサーは両手を上げる。
後で、夏迫はじっくりとアーサー氏が抜け出したような写真、もといアーサーが描いた絵を見せてもらったのだが、かなり近づかないと写真か絵かの判別はつきそうにはなかった。
「でも、まぁ、良かったのかな。いくら好きでも天国まで会いにいけないし」
天国じゃなくて、米国ならまだ飛行機に乗りさえすれば、会える。
夏迫はそう思うのだ。
「You’re a real looker today, as always.」
月の光へ透き通るような髪に彫りの深い顔立ち。ワイシャツをやや着崩して着る彼は神秘的にさえ映る。
まるで、この世の者ではないような、この世に存在するアーサー・ベル氏。
「The same to you?」
夏迫はまたたどたどしく「君もね」とアーサーに手を伸ばすと、アーサーは笑った。
アーサー・ベル氏が18歳頃に撮ったという写真。アーサー・ベル氏や彼の座るソファーやその隣のテーブルへと飾られた薔薇の花はそのままに。
夏迫とアーサーは展示室の中から、博物館の中から忽然と姿を消していた。
残り少ない時間だけど、恋人の40回目の誕生日を祝う為に。
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