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第13話
2018年8月24日PM8:50。
「以上で、アーサー・ベル氏のコレクション展~時代(とき)を越えて愛される宝物たち~のミュージアムツアーは終了となります」
その声は40歳の落ち着きのある男のものだった。本日、誕生日を迎えた男の声は声こそ年相応に深みがあり、鼓膜を揺さ振るようなものだ。どこか艶があるというか、セクシーにすら感じる。ただ、「何か、質問はありますか?」と促す声の主はパリッとしたシャツを着ているものの、やや草臥れた感じのする男だった。
「今年は猛暑の影響で残念ながら今年のナイトミュージアムは本日のツアーをもって終了させていただきます。31日にも来たかったのに! という皆さまがいらっしゃいましたら、申し訳ありませんでした」
夏迫はふわりと笑うと、軽く会釈する前に、静かな館内へ笑い声と拍手が沸き起こる。中には7月の20日から本日まで毎回来てくれた人もいたようだった。短く話をして帰る来館者もいたが、次々と館外へ出て行った。
「それにしても、あのアーサー氏が抜け出たような写真、よく描けていたな」
誰もいなくなった展示室で、夏迫は今日もアーサーを待っている。
あのアーサー氏が抜け出たような写真、それは写真ではなく、アーサーの描いた絵だったらしい。
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