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第52話

二人で屋敷へ戻る。お互い会話はない…でも不思議と嫌な沈黙ではなくて… キッチンで手際よく料理をする後ろ姿をぼんやり見詰めていた。 本当に綺麗な人…立ち振舞いも綺麗で使用人の姿が似合わない。 「いかがされましたか?璃人さま」 あまりに見詰めすぎてしまったのか瑪瑙さんが不思議そうに振り返った 「あのさ…その“さま”ってやめてくれない?瑪瑙さん」 誤魔化すように話題をそらす 「…しかし…」 「いいって。気になるからやめて?」 「では…なんとお呼びすれば?」 「呼び捨て?」 「いや…流石にそれは…じゃあ…りとさんでどうですか?」 「その呼ばれ方初めて!なんか嬉しい!いいよ」 「では…りとさん。お食事出来ましたのでお召し上がりください」 「ねぇ…めのさん。」 「めの?」 「めのうさんでしょ?だからめのさん。敬語もやめよ?」 「…わかりま…わかった…」 「うん。めのさん。一緒に食べて?一人は寂しいから」 「そんな!俺なんか…」 「だーめ。ね?」 「はい…じゃあ…」 半ば強引にめのさんを誘う。今は誰かに側にいて欲しい… そしてゆっくり食事を始める 「うん。いただきます。…すげー美味しい!!めのさん料理人?」 驚いた…どこかの高級料亭の味に似てたから…何でかな?忘れられなかった思い出の味…あんなに多くの店に行き食事をしてきたのにこの味だけはしっかり覚えてた 「えぇ。先日まで古い料亭の厨房に」 「へぇ。だからこんなに本格的なんだ!すごい!家で食べてるなんて思えないくらい美味しい!ありがとう」 「そんな…大袈裟な…」 大袈裟なんかじゃない…多分間違いない…でもそこは…店主が最近亡くなって…店を畳まざるを得なくなって…今はもう存在しない…中にいた料理人たちはみな現在は店主と古くから親交のあった店にそれぞれ移動したと聞いていた。でもめのさんは?わざわざ俺だけのために入ったばかりの店を休むはずない… でも聞けなくて…食事を終えた…

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