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第110話

茜くんがお茶を用意してくれて向かい側に座りさなえくんは俺の隣にいた 「で?さなえ。どういうこと?」 先に口を開いたのは茜くん。声に少しだけ苛立ちを滲ませていた。ゆっくりとさなえくんが顔をあげ言葉を紡ぐ 「茜は最近は目も合わせてくれなかったし話しも上の空で聞いてるか聞いていないかわからなかったし…距離だって離れていて…だから…もう俺のことただ情で一緒にいるだけでもう他にいるんだって気付い…」 「はぁ?お前何…」 さなえくんの言葉を途中で折るように声を発した茜くんを制する。 「茜くん。少し待って。ちゃんと最後まで聞いて。」 渋々首肯く茜くん 「はい…」 すこし腰をあげていた茜くんが座り直す。さなえくんが続きを発する 「そう思っているときにホテル街に向かう道でお前が誰かと幸せそうに寄り添って歩いているの見かけたから…あんな笑顔…俺最近はいつみたかわからないくらい見てなかったし…お前は優しいから俺に別れたいって言えないんだって思ったら俺から別れる話をした方が良いって思って…だから…だから…あの手紙と箱と鍵を置いていった」 「で?茜くんの言い分は?」 「取り敢えずあなたはさなえのなんですか?」 茜くんはまだ冷静になりきれていない。俺に強い敵意を向けていた 「俺?箱ってあの時のやつ?」 「はい」 答えを聞き茜くんを見据える 「箱の中身見た?」 「見ました」 「うん。その工房の人だよ。茜くんが最近元気ないしいつも側にいてくれている君にプレゼントしたいってさなえくんが作ったやつ。その作り方を教えているのが俺の仕事。そこに美空くんと来てくれたのが最初の出会いだよ」 「そんな人の車に何故さなえが?」 「さなえくんがこの家を飛び出して来たときにたまたま見掛けて泊めてた。ここに帰れないっていうし君と関わりのあるところには行けないって言ってたから。」 「それで?さなえに好意でも持ちました?欲しくなりました?」 「そう見える?」 「はい」 「そう。さすがだねぇ。俺は一方的にさなえくんに思いを寄せた。これは事実だよ」 「で?」 「何?関係持ったとか持ってないとかの話し?」 「はい」 「寝たよ。同じベッドでね」 「…そうですか。で?さなえ」 「何?」 「この人に好意持った?」 「は?」 本当に茜くんは子供だ…簡単に俺の挑発に乗ってさなえくんの傷を抉るような言葉を発する。あまりにも酷い…でも…それは裏を返せばさなえくんのことをとても愛していると言うこと。それはもう病気みたいに。 「茜くん。君さ、さなえくんの話し聞いておきながら自分のことは話さないの?そりゃあさなえくんだって疑うよね?ちなみに一緒のベッドに寝ただけであって体の関係はないからね。」 「そうですか。」 さなえくんが可哀想になり真実を告げると少しだけ茜くんはホッとしたように息をはいた 「茜くんはどうなの?本当に他にできたの?」

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