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第109話
そんな生活が一週間ほど過ぎた
少しずつ気持ちの整理もできてきたのか、さなえくんから笑顔が出るようになってきた。
「璃人さん」
「ん?」
「今日は迎え大丈夫です。茜とちゃんと話し合ってきます」
「うん。わかった。どうなったかくらいは教えてね。心配だし」
そしてバイト先までさなえくんを送って俺は仕事へ向かった。仕事を終えやはり心配になり今一緒にいるのであれば電話は出てくれないかもしれないけれど…悩んだ末にさなえくんの番号を押した
出ないと思ってたのにさなえくんはとても沈んだ声で電話に出た
「ごめん!今一緒だよね!」
一緒なら変に誤解されかねない…
「いえ…用があるって話し出来なかったんでこれから帰ります。」
え?話ができなかった?あんなに勇気出して頑張るって言ってたのに…
「はぁ?迎えに行く。今店の近くだから」
急いで店に迎えにいくと俯きすぐにでも泣き出しそうな顔でさなえくんが佇んでいた
「お疲れ様。さなえくん。うわ…すごい顔…」
「ははっ…もう俺との時間も作りたくないんですって…茜は…」
車に乗せた途端涙が溢れたさなえくんを抱きしめたい衝動に駆られるが耐えた。
「話しさえさせてもらえないなんて…」
消え入りそうなその声が胸を締め付ける…車を出そうとしたら…
「さなえ!!」
誰かがさなえくんを呼んだ。多分茜くんだな…
「そういうことね。相手が出来たからあんな…だったらちゃんと言ってくれれば良かったじゃねぇか!」
あ…盛大に勘違いしてる…言い争いが始まるのを横目に見る
「は?」
「他にいるって言ってくれれば!」
「何いってるの?!それはお前の方だろ!!」
「ふざけんな!」
「こっちの台詞だよ。俺と話すより大事な人が待ってるんだろ!早く行けよ」
これじゃあ埒が明かない…
「こらこら…二人とも落ち着いて。茜くん。取り敢えず乗る?話しちゃんとしな」
「茜は人が待ってるんです。早く行けよ」
頑固なさなえくん…そしてちょうどいいタイミングで茜くんの着信が響く
「ほら。出なよ。じゃあね。璃人さん!出して!早く!」
「すいません!今日は無理です。また」
茜くんはすぐに電話を切った
「お前何やってんの?その人傷つくじゃん」
「うるせーお前以外どうだっていい」
「はぁ?ふざけるのもいい加減にしろよ!」
本当に…やめて…こんなん意味ないし…そう思ったら自分でも思ってた以上に低い声が出た…
「おい!!お前ら!!」
その声に二人の言葉が途切れた。あら?怖がらせちゃったかな…ごめんね?気を取り直して言葉を紡ぐ
「あのさ…二人とも落ち着いてちゃんと話しなよ。お互い何かおかしなことになってそうだけど?家まで送るから乗りな。あ。場所教えてね。なんなら俺見届け人になるけど?」
二人きりで話させたら感情的になっておそらくおかしな方向に行きそうだから見守ることにする。笑顔でそう提案する
「誰かいないとこじれそうだし無理矢理付いていくわ」
車に茜くんを乗せさなえくんの案内で二人の自宅に着いた。さなえくんはなかなか体が動かないようで固まっていたのをそっと背中を押す。
一先ずリビングのソファーに腰を下ろした。
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