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第108話

横になるとさなえくんが俺にきつく腕をまわす。思ったより力が強くて驚く。俺にしがみつき俺の胸に頭を押し付ける。非常にまずい… 好きな人に抱き締められるなんて何の拷問なんだろう…苦笑しながら名前を呼ぶ 「さなえくん。」 「や…」 う…何それ…可愛すぎるんだけど…困った… 「やじゃない。ほら顔あげて。ここにいるから。ね?」 「いかない?離れない?」 「うん」 幼子のように言葉を紡ぐ。よっぽど眠いんだろう…いつもより舌っ足らずだ… 頷くと腕の力を弱めてくれた。さなえくんを出来る限り優しく撫でた そしてトントンと一定の早さで背中を叩く。 涙が出てる…昨日あれだけ泣いたのに…本当に茜くんの事が大好きなのだろう さなえくんのすすり泣く声だけが静かな寝室に響いていた さなえくんが寝付くまでずっと抱きしめ背中を叩き続けるとやがて穏やかな寝息が聞こえた 「もう…本当…何でいつも気になった子には好きな人がいるんだろう…」 寝顔があまりにも可愛くて頬に唇を落とした。さなえくんの体温が心地よくて次に起きたときはもう夜が明けていた。さなえくんを起こさないようにそっとベッドから這い出る。いつものように朝食を準備して再度寝室に戻ると寝ぼけ眼で体を起こしていた 「おはよ。起きた?」 「おはようございます。すいません。昨日はわがままを」 「気にしないで。誰でもそんな日はあるでしょ」 微笑みかけるとさなえくんはほっと肩を撫で下ろした。 俺にとっては修行みたいな夜だった。なんて本人には言わないけどね…

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