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第107話
食事を終え約束通りさなえくんをバイト先まで送る
「ありがとうございました」
「また終わったら連絡して。迎えに来るから」
「はい。ありがとうございます」
車を発信させバックミラー越しに見たさなえくんは車が見えなくなるまでずっとこちらを見つめていた。
その姿にまた胸が締め付けられる…ダメだとはわかってるのに
「はぁ…好きだな…」
元々惚れっぽい方ではないがさなえくんは俺にとっては魅力的すぎて…
一番心引かれたのはやっぱりあの一途さと健気さ…そして人を気遣える優しさ…それにあの容姿まで備わっている…惹かれないわけがない…
どこかに夏南を重ねているのかもしれない…
あの頃の夏南を…
何度も何度も繰り返す思い…後悔ばかり…
…別に今夏南とどうこうなりたいなんて思ってない。でもあの頃は一途に思われて…
…でも裏切られて…
俺はきっと…ずっと…夏南から貰った優しい気持ちも心の傷も結局忘れることはないのだろう…
「結局あの頃の傷は消えたようで消えてないんだな…」
自分を嘲笑し円山へ向かう。月に一度の合同会議だから。
話なんてほとんど入らない。機械的に業務を終えさなえくんを迎えに行く時間…
「…きついなぁ…」
好きな人が他の誰かを思い悩ましい表情をする隣にいるのって…
そう考えると琢磨はすごいと思う。きっとあの頃の琢磨はこんな気持ちを抱えていたのだろう…好きな人が幸せであるように…傷付いたら癒してあげられるように…好きなのにそれを声に出すこともなくただ静かに寄り添う…まだ幼かったはずなのに…大きい人間なんだな…
夏南が琢磨を選んだ理由もわかる
…俺はきっと今でも琢磨のようにはなれない。琢磨には一生敵わない…
さなえくんにはちゃんと茜くんとしっかり向き合い話し合ってから色々結果を出して欲しい…どっちに転んでもさなえくんが…俺の好きな人が…俺みたいに後悔しないように…ちゃんと全てを納得し先に進めるように…手助けを…俺はいくらでも踏み台になる…好きな人が幸せになれるのであれば…
店の側に電話をしているさなえくんを見つける。茜くんだろうか?車に気づくと彼は電話を切った
「お待たせ。お疲れ様」
「すいません…迎えに来てもらっちゃって」
「いいよぉ。電話大丈夫だったの?」
「大丈夫ですよ」
「ならいいけど」
今日も食事を準備して一緒に食べて…あぁ…幸せだな…今だけ…これに浸りたい…
夜も更け眠気が襲ったのかさなえくんがうつらうつらし始める。
「眠い?寝る?」
「ん…璃人さんはまだお仕事?」
「今日は終わってるよ」
そういうとさなえくんが抱き付いてきた。突然のことに驚き固まる…でも震えるさなえくんに気付きどうにか冷静さを取り戻す。
「どした?」
「あの…一緒に…寝てくれますか?」
「…だーめ。」
「どうしても?…」
首をかしげながら潤んだ瞳で俺をまっすぐに見る…心臓に悪い…かわいすぎ…そんな目で見られて断れるわけもなく…
「っ…もう…それダメだって…可愛い…」
「え?」
「わかった。一緒に寝ようか」
「はい…」
俺の手を掴んで離さないさなえくんにドキドキしながらさなえくんの手を引きベッドに横たえた
手は出してはダメ…きっとお互い後悔する…から。理性を総動員して息を吐いた
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