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プロローグ

僕の人生はピアノ線やった。 この世に生まれてから26年、それなりに整った顔とスタイルを持っている僕……人生これからなはずやのに。 遺伝子だけしか残してないくせに、父と名乗るあいつに折られてしまうかもしれない。 それなら、いっそ……僕自身で終わらせてしまおうじゃないか。 ダンボールに物を詰められるだけ詰め、必要最小限のもの……財布とスマホなどを鞄に入れ、仮初めの部屋を出た。 カギをポストに放り込み、階段を降りて駅へと向かっていく。 僕はこの町を出て、ある街へと行かなければならない……あいつに見つかる前に。 そして、僕はある人に最期の身を捧げることになっている……顔と名前しかしらんけど。 ある人との出会いは1ヶ月前のこと。 献血のことを調べていたら『全血液提供できます』と書かれたブラッドセーフというサイトを見つけた。 『最高の1日を私と過ごしてみませんか?』 というキャッチコピーと色白の肌にぷっくりとした唇で妖艶な微笑みを浮かべる、サタという彼に僕は目を奪われた。 形だけでもいい……僕を愛してください 僕はその思いで、キオという名前と顔写真を送った。 古き良き時代が残るある街に僕はやってきた。 でも、待ち合わせは完成する前から話題になった新しいものが見える場所。 まだ待ち合わせには早いけど、寄り道せずにその場所に入っていく。 「わぁ、きれいやわ〜」 淡い水色のそれはとてもとても綺麗で思わず見惚れてしもうた。 あの人が来るのはそれが青か紫にライトアップされてから……あと、どれくらいかわからないほど待ち遠しい。 僕はこの日のために、食事は健康的なものにしたし、身体は少し柔らかめの肉をつけた。 ーー全てはあの人のために。 僕の頭の中ではベートーベンのピアノソナタ第8番の悲愴の第2楽章が流れる。 でも、全然悲しくなんてない……むしろ、ワクワクしていた。 「早く来ないかなぁ〜」 僕はまだ知らない……本当に最高の1日になるのかを。

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