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第1話

セフレ。たまに聞く話で、セフレから恋人になったという人がいる。しかし大体は一ヶ月。もって三ヶ月程度で関係が終わってしまうらしい。それもそうだ。元々は身体だけを求めていたわけだから、心を求め体を触れ合わせる機会が少なくなればなるほど、物足りなさが生まれるのだろう。これに関しては仕方ないことだと思う。だからこそ、セフレからの恋人というルートは通らない方が良いと考える。 都内某所。小さな三階立てのビルがある。そこは、つい二年前に立てられたばかりの広告会社。しかしそこの社長は優秀なもので、もう既に大手会社と三本の契約済みと来た。そして、その優秀な社長こそがこの俺。斎藤要斗(さいとうかなと)だ。 うちの会社のウリは、上下関係を気にせずに働けるというところ。こじんまりとした会社のため、社長以外の役職は細かく決まっていない。その為、各々がのびのびと過ごせる。その方が肩に力が入らず、自然といいものも作れるということだ。 社員についても、いい人材が揃っている。計八人。小企業としてはそれくらいが妥当だろう。その中でも俺と関わりが深いのが三人いる。 一人目。北園瑠生(きたぞのるい)。彼は会社を立ち上げてすぐの頃、一番に社員として希望をしてくれた。そして、仕事ぶりも充実しており、一人でも他社との交渉を任せられるくらいだ。 「社長、企画書です。目通しておいてください」 「分かった。いつも仕事が早くて助かるよ。ありがとう」 社内では、一番信用のおける部下だと思っている。 二人目。河内愛美(かわうちえみ)。元々は大手企業に務めていたが、そこの方針が気に食わず仕事を辞めてきたと言う。その大胆さを買って、今はここで働いでもらっている。さすがと言うべきか、彼女の入れるコーヒーは逸品だ。 「社長、少し休憩されては?コーヒー入れましたよ」 「ありがとう。本当にこのコーヒーは美味いな」 気も効く、仕事もできる。有能なマネージャーのような存在だ。 そして、三人目。これがかなり厄介だ。 大河内遼河(おおこうちはるか)。仕事ぶりは北園の次に優秀で、望んだクライアントとはすべて契約を取ってくるという、ある種の天才。遅刻はたまにするものの、その日のノルマは必ず終わらせて帰る。不真面目だが、真面目だ。 さて、こんな優秀な社員の何が不評なのか。それはすぐに分かるだろう。 「社長ー」 「…げっ」 「今夜の約束覚えてます?」 「ばっ、!大きな声で言うな」 そう。俺はこいつと上司部下以上の深い関係を持ってしまったから。 「…今夜、楽しみにしてますよ。要斗さん」 「っ…!」 俺と遼河はセフレなのだ。

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