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恨み
【とある一室にて】
No side
「今頃、学校では新入生歓迎会のパーティですか。そういえば、今年も、やるんですねアレ。
僕達も、半日をかけてやリましたよね。」
「あぁ。そうだな。楽しかった。」
「まだ、あれをやってるんですね。僕たちもやったから、懐かしいな。」
「怪我がないといいんだがな。」
「そういえば、一番、反対してたの天宮くんでしたよね。まぁ、元風紀委員長ですし。当たり前ですね。」
「もう、昔の話だ。」
アンティーク調の丸机を挟んで
品が漂う白がベースの服を着こなす優しげな顔立ちの佐藤財閥の当主、佐藤純と
前髪を後ろに撫で付けて
出された顔は端正としかいいようがない
天宮財閥当主、天宮要がお茶会とは名ばかりの話し合いをしていた。
「分かりました。」
ため息と共に諦めたような口調で佐藤純は
天宮要に肯定の言葉を告げる。
「あなたにそこまで頼まれてイヤですと首を振るほど僕も薄情ではないので。
天宮くんの息子は、高校3年間こちらの
子供ってことにしておきます。何かしらの理由があるんでしょ、あなたは昔から変わらない。」
「悪いな。あの子のこと頼む。」
「心配しないでください。天宮財閥の息子を無下に扱いはしませんよ。それにしても、あんなに大きな息子さんがいたんですね。」
「あぁ。雫とのな。」
「結婚の報告を聞いたときは
正直、驚きましたよ。あんなにあの人を、春田くんを追いかけていた二人が結婚してたなんてね。」
「それは、お前もだろ。あいつに憧れて焦がれたのは皆、同じだ」
ふふっと抑えたように純は笑い
それに、若干、要は不機嫌な表情になる。
「何だ。」
「あなたって、やっぱり春田くんのことになると普通じゃないですね。やっぱり、忘れられませんか。」
「俺がおかしいんじゃなくて、アイツが魅力的だったソレだけだ。」
「やっぱり、春田くんのことになるとおかしいですね。そんな天宮くん、教えてくださいよ。
突然、息子を偽名で入学させる理由を。」
真っ直ぐ向けられるその瞳に
天宮要は、一つ、深い溜め息をつく。
「教えられない、と言いたいところだが
会えばすぐ分かる筈だ、お前なら。」
「全然、そんなの答えになってませんよ。」
※
No side
「春くん、か。一体、どんな子なんだろうな」
佐藤純は、ベランダで夜風に当たりながら楽しげに口角をあげ、コーヒーカップに口をつける。
「それにしても。今まで、噂にも聞いたことないな。天宮くんにあんな大きな息子がいたなんて。普通に考えれば、時期当主の筈なのに。
何でなのかな。」
__________カタン、と。
室内からの物音に反応し佐藤純が
部屋の中を見回す。
「あぁ、写真が。」
佐藤純の手にあるのは
一人の男子生徒を中心として
仲良さげに沢山の人が映る写真。
『純っ!ほら、何やってんだ行くぞ。』
ゆるりと口元が緩んでいく。
その声、その顔、全てが忘れられない。
いや、忘れられる筈もない。
けれど
「春田くん。僕は、君を恨みそうだ」
そう言い切ると
佐藤純は、その写真立てを伏せた。
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