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春の風
No side
「ぇ、何で。」
「何で唐突にそんなことを言うのか説明をしてください。」
荒谷の言葉に続いて、雪も何故かと言葉を続ける。
「いいからとにかく保健室でろ、出たら説明するから」
「「イヤ(だ、です)」」
荒谷と雪の動こうとしないその姿を
視界に入れると黒河は腹の底から吐き出された深い溜め息をつくと視線を合わせて話し始めた。
「最近、佐藤財閥が台頭してきてるのは知ってるな?」
「佐藤財閥?」
「佐藤純さんのことですね。」
「荒谷、流石にソレはないだろ?」
「いやー、俺そういうのには興味無いんで」
「にしても、お前が知ってるとは思わなかったよ、雪。」
「知らないわけないでしょう。いやでも入ってくる情報ですよ。尤も、貴方に言われる筋合いはありませんけど」
「まぁ、そうゆうなよ。雪」
雪が、冷えきった視線で黒河を見つめて
黒河はバツが悪そうに首に手をあてながら、一瞬、視線を外した。
けれど、すぐに、荒谷と雪に視線を合わせた。
「………まぁ、オーロ世代っていうのは流石に知ってんだろ」
「「………。」」
「財閥の子供ならこんくらい勉強しろよ、今度から。オーロ世代っていうのはだな手っ取り早く言えば優秀な人材を多数輩出した世代で、有名なのが現生徒会長の父親の唯賀勝羽、天宮要それと西方燐、桐島優璃、河井爽、月城めぐむとかで一度くらいは挨拶したことはあるだろ?それに最近台頭してきたのが佐藤純だ」
「ってことは、その佐藤純っていうのが佐藤の父親ってこと?先生。」
「そうだ。オーロ世代何て、常識中の常識だ、知らないなんてろんが………」
「り~っちゃん!!ひどいじゃあないのよ~、一人忘れてるわよッ!!」
黒河の台詞を遮って
後ろから黒河に飛びついた桜崎に皆
驚きの表情を浮かべながら
呆然とその様子を見ていた。
「つうか、こんな時間に何しに来たんだ
お前。てゆうか、りっちゃんって呼ぶなって何度も、」
「理人、もう来てるわよ。門の前に」
桜崎にそう言われた黒河は表情を
変えてすぐに外に向かった。
「え、先生っ?!何処に行く_____って、もういない。」
「さ。りっちゃんのことは放っておいて
帰るわよ二人とも。」
「でもさとーさんがここに来ることと、保健室を出ることに何か関係あるの?」
荒谷が疑問を桜崎に告げると、
「別に、いても問題ないですよね。」
雪もそれに同調した。
「佐藤純さんがここに来るのよ。
純さんも内密にってことにしたいらしいから私たちがここにいることは避けたいのよ、ってことで私があなた達を寮まで送り届けるわね」
それでもなお
ベッドで眠る春に名残惜しげに視線を向ける2人に桜崎は微笑んだ。
「ほぉら、行くわよ!!ここにいても風邪が移っちゃうだけでしょ、それに私が怒られちゃうのよ!!」
「「………わかりました。」」
やっと歩き出した二人に安心して
前を向くと荒谷があ!と思い出した様な声を出して告げる。
「そういえば、さっき言っていたもう一人って一体誰なんですか?」
「あぁ、それはねオーロ世代でも
この学校としても最も有名人、それが春田叶多さんよ。オーロ世代の2大勢力のうち1つは彼が纏めていたと言われていたわ。」
“言われていた”その言葉の響きに
疑問は生じるが
二人はそれを聞くことはなかった。
それは、桜崎先生が泣いていたから
とかではなく悲しそうだったからとかでもない。
何故なら
サァァァと強烈な風が吹いたのと同時に
外からの衝撃からは絶対に壊れないと
いう文句が売りの頑丈にできているテラス戸が壊れたからだ。
一人の人間の衝突により。
「だ、大丈夫ですか?!」
桜崎先生が足早に近づくと
その男性は硝子の破片を身に纏いながら
立ち上がり
「あ、どうもはじめまして。今日から
お世話になります。寮監の鳴川で……」
自己紹介も終わらずに
床に倒れ伏した。
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