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第10話
帰り際におばあちゃんからビン詰めのらっきょう漬けを貰い、門の前でなぎとに見送られ、ひずるは自転車を飛ばして家に帰った。
「明日絶対行くから」
なぎとにそう慰められて、ひずるはなぎとを覆っていた体をしぶしぶ離した。
帰宅後、階段をかけ上がりひずるは自室に隠ると、床に転がったボックスティッシュを拾い上げ勉強机に放った。
続いてひずるもシャツをめくり、スウェットの腰ひもをほどいて、パンツも同時に腿上まで下げると、ギィッと音を立てて椅子に座った。
自転車を飛ばして帰った息と、早くどうにかしたいと急く息が、ひずるの呼吸を荒々しくさせ、ほどよく割れた見栄の良い腹筋が辛そうなその呼吸に合わせて波を打った。
なぎとと離れてからも冷め切らず、熱が残るペニスを手早く捕まえて、ひずるは躊躇なく上下にしごきはじめた。
「ふ……っ………は、ァ…」
すぐに熱を持ち直したひずるのペニスは、弧を描くように更に大きく硬く勃起した。
さっき見たなぎとの清んだ目、なまっちょろい首筋、月明かりの下でキスした小さな乳首、それからいつも夢中でしゃぶりついているなぎとのペニス…吐息。
目をつむると、ひずるの脳裏にはなぎとの全てが鮮明に映し出された。
────く、……あ…っ…あ、あ……!
声に出せない喘ぎを指を噛んでがまんして、ひずるはまもなく絶頂を迎えた。
ドク、ドク、と溢れ出し脈を打ち、手の内に収まりきれないほどたくさんの濃い精子を、ひずるは一人で5日ぶりに外へと放出した。
はっ…はっ…と呼吸を整えながら、ボックスティッシュから引き抜いたティッシュで、指の間から溢れ下へ流れようとする精子を救い上げて行く。
全部綺麗に拭き取り終わると、ひずるは大きく深呼吸をした。
「…くそ…こんなんじゃ全然足りねえっての」
ひずるは愚痴ったが、服を元に戻し勉強机から離れた。
「あ、らっきょう」
一階に降りて洗面所で手を洗うひずるは、自転車のかごに入れたままのらっきょう漬けを思いだした。
なぎとのおばあちゃんが漬けたらっきょうも、梅干しも、花村家では大人気だ。
洗面所を出て自転車に取りに行き、ダイニングでひずるが部屋から降りて来るのを、料理を並べながら待っていた母に手渡した。
「これ、なぎとのおばあちゃんから」
「まあ、らっきょう、嬉しい!って、コンビニ行ってたんじゃなかったのね」
「ああ…、うん」
ひずるからビン詰めのらっきょうを受け取った母は喜んで、キッチンに向かうとさっそく数個小皿によそった。
テーブルの上にはなぎとの言った通り、いつもより品数が多めの料理が並べられていた。
「あ、ねえ、ひずるー、お盆なんだけど」
母はついでにひずるのご飯もよそいながら
、こちらを向いて話しかける。
「何?」
「東京の叔母さん初盆だったじゃない?」
お盆に乗せた茶碗を母から渡され、ひずるは適当に相づちする。
「あー、うん」
「初盆には行けなかったけど、パパも日曜日からお盆休みだから、顔を出しに行くことにしてるのよ。」
────?!!
「…へ…ぇ…」
「でもお盆の間、あんた一人になっちゃうから……大丈夫かしら…?」
母はとても心配そうな顔をするが、ひずるの「へえ」は、なぎとのラブホ宣言以上に上ずっていた。
マジか!?と言う言葉を飲み込んで、ひずるは母の心配をバッサリ断る。
「俺もう18だよ?そんな心配必要ないから。子守りとかもう本当やめて。」
「そ~う…?でもねえ……」
顔に出さないようひずるは平静を装ったが、その耳にもう母の話しが入って来ることはなかった。
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