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第9話『そんなことない!』

ちらりとドアから覗くと 潤くんの前にはもう女の子はいなかった。 (今ならいいかな…?) そう思って声をかけようとしたとき。 潤くんがこっちを向いた 「あっ」 少し驚いたけど、潤くんはもっと驚いた顔をしてから笑顔でこっちまで来てくれた。 「なかなか来ないから、約束忘れちゃったのかとおもったよ」 頭を軽く撫でて微笑む。 ぬぁ~……イケメンだぁ。仕草も声も性格も。 「とおる君?」 「はっ、ごめん。 あ、いやほら、人とお話し中だったから邪魔しちゃ悪いかなと思って。」 「全然、とおる君との約束が何より大事なんだから。次はお話し中でも呼んでね?」 それはちょっと相手に申し訳ないですけど…… 「うん……あ、そうだ用事!」 「なあに?」 「みんなに、潤くんと…その…… 付き合ってる ってばらしちゃったら、 潤くん嫌じゃない?」 「俺は嫌じゃないよ。 ……けど、やっぱりとおる君は俺のこと彼氏として認めてくれてないのかなって思っちゃっただけだよ。」 「や!そんなことない!」 思わず大きな声で否定しちゃったお陰で、クラスにいたほとんどの人が僕たちのいるドアの方へ顔を向けた。 「ん……とおる君がみんなに注目されるのは、あんまりいい気分じゃないし、場所変えよっか」 「うん…ごめん」 「謝らないの。その癖、なおしていこうね」 優しく微笑んで手を引いてくれる。 移動した先は、隣の空き教室だった。

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