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第一章「代償」

 今年もこの季節がやってきた。  液晶テレビの画面に映し出されている薄暗い背景。若者達のダミがかった笑い声。激しく揺れている映像は音声よりもぼんやりとした輪郭で、まさに素人感が出ていた。僕はその映像を細部に至るまで凝視していく。 『お分かり頂けただろうか?』  おどろおどろしい男性の声と共に場面が暗転し、僕はソファに凭れかかり首を傾げる。  不気味な背景と共に映し出された「replay」という字に、僕はもう一度体を前のめりにする。  先程と同じ映像が流れ、今度は分かりやすいように画面が停止すると、その箇所を示すように寄っていく。 「うわああああっ!!」  僕は思わず叫び声を上げると、ソファに仰け反り返った。確かにあるはずのない場所に、ハッキリと女の恨めしそうな顔が写しだされていたのだ。 「朔矢!! あんたうるさい!! そんなのばっか見てるせいで、棚が勝手に開くのよ!!」  キッチンで食器を洗っている母親の怒声に、僕は母さんより怖い存在はいないからと心の中で悪態を吐く。それに棚が開くのはきっと、ネジが緩んでいるせいだろう。

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