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「代償」18
僕もやっと肩の力を抜き、ホッと息を吐き出す。僕は心霊スポットに行ったりなんかしていない。まるで審査に通ったかのような気持ちで、僕は期待に満ちた目を神近くんに向ける。
「何か誤解してるかもしれませんが、誰も祓ってあげますとは言ってませんよ。先輩」
悪戯っぽい表情で口角を緩く上げた神近くんに、僕は愕然として危うく棚から落ちそうになった。安堵したのもつかの間、術を失った僕は途方に暮れて今にも泣きそうになる。期待させておいて、まさか崖から突き飛ばされるとは思ってもみなかった。
「良い顔しますね。先輩」
「お前、いい加減にしろよ!! 困っている奴をからかうなんて質悪いぞ!!」
僕が止める間もなく、泰明は立ち上がるなり神近くんの胸ぐらを掴む。身長差に大差はないものの、体格差では泰明の方が上だ。
「荒っぽいですね。それが人に物を頼む態度ですか?」
「泰明!! やめて!!」
僕は慌てて二人の間に割って入る。泰明は引き下がるも不服そうな顔で俯き、神近くんは呆れたような視線を向けるだけで怯んでいるようには見えない。
これ以上ここにいては、泰明が手を出してしまいそうだった。僕のせいで退学処分にでもなったら、幽霊どころの騒ぎではなくなってしまう。怖いし、不安は拭えない。足も震えてるし、涙も出そうだ。それでも僕は泰明の腕を引き「帰ろう」と声を振り絞った。
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