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「代償」17
僕は出来るだけ廊下から遠ざかろうと、窓際に移動して棚に腰掛ける。泰明も「大丈夫か?」とさっきから同じセリフを繰り返して、僕の傍に付いて回った。
「先輩たち面白いですね。鐘島先輩はその人の保護者か何かですか? 高校生にもなって、べったりじゃないですか」
神近くんが小さく笑い声を上げる。再び泰明が怒りに震えだし、僕は力なく「やすあき」と声を掛けた。泰明は暴力を振るわないし、激高しないのは分かっている。それでも挑発に乗り続けていたら、何をしでかすかわかったもんじゃない。
「神近くん。申し訳ないんだけど、何とかならない?」
僕は不安を訴えるかのように、力ない視線を神近くんに向ける。神近くんは笑うのを止めると、僕を見つめ返してきた。
まるで品定めするかのように、上から下へと視線を滑らせていく。その何もかもを見通してしまうような視線に、僕の背筋にひんやりとした汗が流れ落ちる。
沈黙が重たく、僕は固唾を呑んで神近くんの撫でるような視線にジッと耐えた。
「お人好し……て、とこかな」
ふっと空気が和らぎ、神近くんが僕から視線を逸す。
「心霊スポットか何かに行って、連れてきたのかと思ってました。俺はそういう自分からわざわざ火の中に飛び込む真似をする奴が嫌いなんで」
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