16 / 259
「代償」16
「だって、さっき悲鳴あげたじゃないですか。この部屋の外にいる奴が見えるからですよね?」
「部屋の外?」
僕は視線を扉のガラス窓に向ける。廊下の白い壁が見えるだけで、人など立っていない。
「廊下に誰かいるの?」
僕が首を傾げると、神近くんは目を見開き「じゃあ何で悲鳴上げたんですか?」と言ってくる。
「だって、皿に塩が盛られてるから……結界を張ってるって事でしょ? 出るってことじゃん」
部屋の四隅に盛られている塩に視線を向けた僕は、掴んでいた泰明の腕を更に強く握る。
「なんだ、期待はずれか。まぁー先輩の言う通り、ここは結界を張ってるんですよ。気休め程度にしかなりませんが。先輩に憑いてた奴は、今も廊下をウロウロしてますよ」
淡々と語る神近くんの言葉に、やっぱり憑いていたのかと僕は全身から血の気が引いていく。
「おい、あんまりコイツを怖がらせるな。震えてるじゃないか」
低い声音で泰明が言いつつ、僕の背に手を置いてくれる。そうでなければ僕は腰を抜かすか、倒れ込んでいたかもしれない。
やっぱり憑いていたのだ。それも廊下をうろついているとか……ここから出たらどうなるのか、考えるだけで気が滅入ってしまう。
ともだちにシェアしよう!