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「代償」16

「だって、さっき悲鳴あげたじゃないですか。この部屋の外にいる奴が見えるからですよね?」 「部屋の外?」  僕は視線を扉のガラス窓に向ける。廊下の白い壁が見えるだけで、人など立っていない。 「廊下に誰かいるの?」  僕が首を傾げると、神近くんは目を見開き「じゃあ何で悲鳴上げたんですか?」と言ってくる。 「だって、皿に塩が盛られてるから……結界を張ってるって事でしょ? 出るってことじゃん」  部屋の四隅に盛られている塩に視線を向けた僕は、掴んでいた泰明の腕を更に強く握る。 「なんだ、期待はずれか。まぁー先輩の言う通り、ここは結界を張ってるんですよ。気休め程度にしかなりませんが。先輩に憑いてた奴は、今も廊下をウロウロしてますよ」  淡々と語る神近くんの言葉に、やっぱり憑いていたのかと僕は全身から血の気が引いていく。 「おい、あんまりコイツを怖がらせるな。震えてるじゃないか」  低い声音で泰明が言いつつ、僕の背に手を置いてくれる。そうでなければ僕は腰を抜かすか、倒れ込んでいたかもしれない。  やっぱり憑いていたのだ。それも廊下をうろついているとか……ここから出たらどうなるのか、考えるだけで気が滅入ってしまう。

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