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「代償」15
「へぇー。この学校に俺以外に見える人がいるのかぁ」
感慨深そうな声を上げる神近くんに対して、「見えるって何がだ?」と泰明が顔を顰めている。泰明の露骨に不機嫌さを滲ませた顔に、僕はやっと腑に落ちた。
性格どうこうは置いておいて、少し素行の悪そうな雰囲気が神近くんから漂っている。相手を品定めするような視線。小馬鹿にするような口調や態度。泰明が苦手なタイプには違いない。
「鐘島先輩じゃなくて、こっちの人」
そう言って、神近くんは僕を指さした。僕が何を見えるというのだろう。僕が呆気に取られていると「おいおい。コイツも先輩だからな」と泰明が嗜める。
「ふーん。てっきり自分と同じかと思っていましたよ」
小馬鹿にしたように口元を緩める神近くんに、泰明が憤っているように唇を噛み締めていた。全身から怒りのオーラが発せられ、僕は慌てて「泰明。もう良いから。それよりも本題に入ろうよ」と腕を揺する。
「見えるなら、自分でどうにか出来るんじゃないんですか?」
「見えるって何が?」
さっきから意図の読めない発言に、僕は自ら尋ねる。泰明にこれ以上口を開かせたら、ここから立ち去りかねないように思われた。
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