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「代償」14

 ミディアムの茶色い髪を風に揺らし、少し気の強そうな目元を伏せて不機嫌そうに眉根を寄せていた。高い鼻梁に薄い唇。半袖から延びている白い肌は、日焼けを知らなそうに綺麗で透き通って見える。  話に聞いていた通りで、シンプルなシルバーのピアスと、だらしなく緩められた青のストライプのネクタイ。胸元のシャツのボタンも外していて、少し不良っぽい。 「日本語……読めないんですか?」  こちらを見向きもせずに、神近くんが唇を動かす。 「へぇっ?」  僕は思わず拍子抜けした声を上げてしまう。やっと視線をこっちに向けた神近くんは、「扉の前に張り紙したはずなんですが?」と僕の後ろを指差した。 「ああ、ごめん」  僕は慌てて、ドアを閉める。教室の隅に置かれた白い豆皿に塩が盛られているのに気づき「うわっ!」と小さく声を上げ、僕は泰明の背にぶつかってしまう。 「お、おいっ! 大丈夫か?」  泰明に体を起こされ、僕は体勢を立て直す。 「あれ? 見える人?」  神近くんは驚いたような表情で椅子から立ち上がると、僕たちに近づいてくる。座っているときよりも一段と、スラッとした体躯が際立って僕は唖然としてしまう。  神近くんは神社の息子という凄いスペックの持ち主な上に、まさに容姿端麗だった。天は神近くんに二物を与えたのだ。

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