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「代償」25

 翌日の放課後。空は生憎の雨模様。  雨音だけが響く廊下で、僕は昨日と同じ部屋の前に立っていた。扉のガラス窓から中を覗いてみても、全体は見通せず神近くんがいるかいないのか分からない。  神近くんの連絡先を知らない僕は、何の連絡もなしにここに来ていた。躊躇いがちに扉に手をかけては、離すを繰り返す。 「入るか入らないのか、はっきりしてもらえます?」 「うわああっ!!」  突然声をかけられたことに驚いた僕は、派手に尻もちを着いた。 「そんなに驚かなくても」  そう言って手を引いてくれた神近くんは少し頬が赤く、おでこに冷えピタを張っていた。掴んでいる手も心なしか熱い。 「えっ? 風邪?」  僕は痛むお尻を手で擦りつつ立ち上がると、神近くんに問いかける。夏風邪は厄介なもので、そうだとしたら可哀想だった。 「違います。何だって良いじゃないですか」  不機嫌さを滲ませた神近くんは、すんなりと部屋の扉を開けて中に入っていく。扉を開けっぱなしにしているということは、僕も入って良いという事だろう。 「……お邪魔します」  恐る恐るといった感じで、僕も中に入るとしっかりと扉を閉める。神近くんはだるそうに、窓際の椅子に腰を下ろした。

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