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「代償」26
どんよりとした灰色の光が窓から射し込むだけで、部屋全体が仄暗い。電気を点けるべきか悩んでいると、神近くんの視線が僕に向けられた。体調が悪いせいなのか目が少し虚ろで、ここにいるということは家に帰れないほどなのだろうか。
「何しに来たんですか? 除霊ならもう終わりましたけど……それとも――」
神近くんが力なく頬を緩め、「また、キスでもしたくなったんですか?」と僕に問いかける。
少し気になる言い方ではあったが、まさか神近くんから切り出してくるとは思ってもみなかった。僕はチャンスとばかりに神近くんに近い、窓の前の棚に腰を掛ける。
「その事を聞きに来たんだよ。あれも除霊方法の一つなの?」
「はぁ?」
「テレビやネットで除霊の仕方とか目にしたことは何度もあるんだけど……神近くんの方法は知らなかったからさ。ネットで検索してみたんだけど出てこないし。だから実際に聞いたほうが良いかなって思って」
僕はぽかんと口を開けている神近くんを、不思議に思いつつ問いかける。
「それに嫌じゃなかったの? だって僕、男だし」
いくら泰明が言い出した事だとしても、断ればいいだけの事だ。それに「男とキスするなんてごめんだ」とでも言えば、泰明も僕も素直に引き下がっていたはずだ。もしかすると、部屋を借りるのに泰明の父親が尽力した事で、少なからず恩を感じていたのかもしれない。
僕が一人で納得していると、神近くんは一つため息を零し顔を上げた。
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