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「代償」27
「先輩って……馬鹿なんですね」
しみじみと言う神近くんに、さすがの僕もイラっときて「馬鹿ではないよ。こう見えてクラスで十位以内はキープしてるんだ」と反論する。
「そういうことじゃ、ないんですけどね……」
そう言って神近くんは頭を抱え込んだ。具合が悪化してしまったのだろうか。僕は心配になって慌てて棚から降りると、神近くんの傍に近づいた。
「大丈夫? 帰れないほどに具合が悪いの? 保健室行く?」
神近くんは「救えない馬鹿だった」と呟くと、どこか浮かない顔をした。
「もう少ししたら帰りますのでご心配なく。先輩は早く帰ったらどうですか? 生徒会が終わって鉢合わせでもしたら、大変なんじゃないんですか」
「何で分かるの?」
僕は驚いて神近くんを穴が空くほど見つめる。まさか透視まで出来るのだろうか。そうだとしたら、まさに天性の霊媒師だ。
「鐘島先輩が俺のこと嫌っているのは分かっています。それなのにあなたが一人でここに来たということは、鐘島先輩に黙って来たという可能性が高い。鐘島先輩が貴方を一人で来させるはずがないですからね」
ただの推測を述べる神近くんに、さすがに透視は出来ないか、と僕は少しだけガッカリしてしまう。
「鐘島先輩、いつか生霊になりそうですよ。あの性格じゃあ」
神近くんが僕の後ろに目をやり、静かに逸らす。
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