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「代償」32

「それなら同好会に入ってください」 「同好会?」  そういえば神近くんがいる部屋は、個人で勝手に使って良いはずがない。僕の学校は基本的に、同好会は申請すれば作れる。部活は一定人数がいないと駄目だけど、同好会だったら一人からでも可能なはずだ。 「あの部屋を見て分かると思いますが、パズル同好会です。まさか先輩、パズル出来ないとかないですよね?」 「パズルぐらい出来るよ。馬鹿にしすぎだから」  僕は小鼻を膨らませると、「じゃあ入ってもらえます?」と言って目を細めた。 「分かった。いいよ」  どうせ家にいても母が口うるさいだけだ。それなら部活にでも入ったと言えば、帰りが遅くなっても大目に見て貰えるかもしれない。 「じゃあ明日また来てください。その時にでも入部届書いてもらいますから」  気がつけば僕たちは、駅に着いてしまっていた。 「うん。神近くんもお大事にね」 「どうも」  そう言って神近くんは改札口に向かっていく。僕が後ろ姿を見送っていると、神近くんが突然立ち止まり、顔だけ振り返る。 「あっ! ちなみに俺が部長なんで」  そう言い残すと、ICカードをタッチして改札を抜けてしまう。  取り残された僕は、それってどっちが先輩になるんだろうかとしばらくは固まったまま動けなくなってしまった。  神近くんが部長……僕はとんだ代償を支払うことになったと、安請け合いした自分を呪った。

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