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「代償」31
「僕が持とうか?」
校門を出て駅に向かっている途中、心なしか神近くんの肩が濡れているように見えた。
「先輩が持ったら、ずっと背伸びしてなきゃいけなくなりますよ」
「何で? 背伸びしなきゃいけない程、僕は小さくないよ」
確かに神近くんの方が、僕より身長が高いのは否定できなかった。だからといって、背伸びしなきゃ傘を差せない程じゃない。
僕がムッとした顔で言い返すと、神近くんは「先輩は、誂 いがいがありますね」と言って笑い出した。年下に馬鹿にされるのは心外だが、僕をちゃんと先輩と呼んでくれる神近くんを嫌いにはなれない。先輩だなんて呼ばれたことがなかった僕は、照れもあったがしっかりしなくちゃという使命感も芽生えていた。
駅近くのコンビニで神近くんは傘を買うと、僕たちは別々の傘を差して駅に向かっていく。
「別にここで、別れても良いんですよ」
「駅は目と鼻の先じゃん。せっかくだし、送っていくよ」
さっきよりはだいぶん顔色がマシだったが、それでも駅までは宣言どおり送っていった方が良いように思われた。
「そういえばさ、この前の代償は本当に良いの?」
この間の除霊の件で僕はまだ、神近くんに何も恩を返していない。
「まだそれを言うんですか……」
呆れたような神近くんはふと、押し黙ると傘を少し上げて僕を見た。
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