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「正真」9

 僕達の戸惑う様子には無関心なようで、神近くんはいたって真面目な表情で姉を見つめ、手を出すのを待っていた。 「良いけど……」  ラチがあかないと感じたのか、姉は戸惑いつつも神近くんに両手を差し出す。  神近くんは両手で姉の差し出した手を握ると、目を閉じて「成る程ね」とポツリと呟く。  目をゆっくりと開き手を離すと「先輩。どうしますか? まだ終わっていないようです」と唐突に聞いてきた。 「えっ?何のこと?」  僕は今の一連の流れですら、頭が追いついていない。姉もポカンと口を開けて、神近くんを見つめていた。 「お姉さん、今から彼氏さんの所に行くんですよね? ちょっとだけ、僕に付き合って貰っても良いですか?」 「別に構わないけど、どうして?」  さすがの姉も困惑気味で、僕と神近くんを見比べる。 「先輩のは祓いましたが、お姉さんにべったり憑いてるんですよ。これじゃあ、近くにいる先輩にも被害がきますけど」  まさか姉にも憑いているとは思ってもみず、僕は驚いて神近くんの腕に縋り付く。 「暑苦しいんで近寄らないでください」  神近くんが冷たく言い放ってくるも、僕は逆に強く掴んでしまう。

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