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「正真」10
「え、全くわけわからないんだけど……てか、暑いからどっかに移動できないの?」
姉の言うことはもっともで、日陰のない校門にずっと立ちっぱなしでいるのは辛い。かといって、何処かでお祓いできそうな場所は思い当たらない。
やむを得ず僕は先生に怒られるのを覚悟で、姉を校舎の中に連れていくことにした。
「へー。私立の男子校って、立派なものね。高い学費出しているだけあるわ」
姉が感嘆の溜息を零しながら、僕と神近くんの後をついてくる。
呑気な姉を尻目に、別棟の一階の廊下を僕は今にも張り裂けそうな心臓を抱えながら進んでいた。
今の所は誰にも遭遇していない。大体は二階が主な活動スペースで、一階は重い物を上まで運ばなくても良いように倉庫代わりの部屋や視聴覚室などがあった。
「ねえちゃん静かにして。見つかったらマズイんだから……」
幽霊も怖いけど、先生に怒られるのも怖い。
「はいはい」
反省しているようには見えない姉の危機感のなさに、僕は呆れ返ってしまう。それに加えて、今も姉の後ろには何かが取り憑いているのだ。それなのにも関わらず、姉は呑気に辺りを見渡している。
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