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「正真」11
「ここにしましょう」
一階奥の視聴覚室を指さして、神近くんが僕に視線を向ける。
「えっ? 部室でやるんじゃないの?」
僕は驚いて声を上げると、神近くんは「オカルトマニアと聞いて呆れる」と言って、二階に上る階段を無視して突き進んでいく。
「オカルトマニアとは言った覚えがないけど……」
神近くんは僕の呟きを無視して、さっさと視聴覚室の扉を開けてしまう。
部屋の中は薄暗く、黒いカーテンから僅かに差し込んでいる光だけが長机に延びていた。神近くんは電気をつけると、万が一の為にと施錠をする。
「いいですか? 部室には盛り塩を四方に置いてます。それは何故かというと、霊が入ってこないようにするためです。それぐらい分かりますよね?」
僕は素直に頷く。
「ならば部屋の中で祓ったら、そこに留まる可能性があるってことです。中に閉じ込められて、逆に出られなくなるので」
「でも、僕の時は部屋でやったじゃん」
「先輩が腰抜かしたからでしょ。だから塩を回収してたじゃないですか」
神近くんが呆れたように吐き捨て「あの後、大変だったんですから……」とポツリと零す。
「腰抜かしたわけじゃないよ……」
「とにかく、早いとこ済ませましょう」
僕の弁解はスルーされ、神近くんは佇んで所在無さげな姉に近づく。
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