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「正真」12
神近くんは「信じなくても良いんで、とにかくお姉さんは霊に取り憑かれています」と単刀直入に述べる。
「うーん。俄かには信じ難いし、朔矢の友達だから同類なのかしら」
姉は困惑しつつ、腕を組む。突然そんなことを言われても、ハイそうですかとはならないだろう。ましてや姉は、僕のオカルト趣味をよくは思っていない。
「先輩と一緒にしないでください。こんなに間抜けで、馬鹿じゃありませんから。詳しいことは先輩から聞いてください」
散々僕を卑下した神近くんは、早く済ませましょうと付け足すと姉を椅子に座らせる。
そこで僕はハッとして「神近くん、浮気にならないの?」と慌てて聞く。
「うるさいから、黙っててください」
神近くんはそう言って僕を牽制すると、姉に「僕をみてください」と言って始めてしまう。
僕は神近くんとキスする姉を見たくない。自分の姉のキスシーンを見たいと思う弟がいるのだとしたら、それは特殊な人間だろう。
神近くんが姉の背後に回ると、背を叩き始める。確か僕も背中を叩かれた後にキスをされたのだ。それならば次はキスをする流れとなる。
僕は居心地悪げに、視線を彷徨わせていく。見ちゃいけないし、見たくもない。心臓が痛いぐらい鳴り響き、僕は思わずテーブルに寄りかかった。
「はい。終わりです。早くここから離れましょう」
神近くんは姉と僕を促すと、そそくさと視聴覚室の扉を開く。
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