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「正真」13
「えっ?」
僕は呆気に取られてしまう。僕の時はもっと時間がかかっていたはずだ。視線を逸らしている間にキスしたなら、さすがの姉も抗議の声をあげるか、なんらかのアクションがあってもおかしくない。
「凄い。体が軽くなってるじゃない」
姉は不思議そうにそう言って、肩をさすったりしているだけだった。
先を行く神近くんから少し離れ、僕は姉に「ねぇ? 背中叩かれた後に何かされた?」と小さく尋ねる。
「されたって何が?」
「えっ、と……キス……とか……」
姉にこんな事を聞く恥ずかしさから、僕の声は小さくなっていく。
「はぁ? あんたやっぱり馬鹿じゃないの! 除霊でそんな事したら、セクハラで訴えられるに決まってんでしょ!」
校舎を出て気が抜けたのか、姉が思いの外大きな声を上げた。
「声がでかいよ!」
僕が慌てて言うなり、神近くんに視線を向ける。当の本人は聞こえていないのか、振り返りもせずに校門へ歩みを進めていた。
眩しいぐらいの夕日が、神近くんの影を長く伸ばしている。その姿にやっと日が落ちたんだなと、感じさせられるまでに外の様子が変わっていた。
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