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「訪問」15

「そんなに笑わなくったって……」  そう不満を言いつつも、僕は内心ではホッとしていた。せっかく泰明を説得して部活に入部したのに、もう退部しなきゃいけない状況になったら泰明に顔向けできない。  安心して気が抜けた僕は、笑い続ける呑気な後輩をじっと見つめる。  日暮れを告げるようなオレンジ色の夕日がカーテンから射し込み、照らされた神近くんの茶色の髪が明るさを増す。白い彫刻のように整った顔立ちが朱色に染まり、目元に浮かべた涙が輝いていた。  その絵に描いたような姿に、僕は少しだけドキッとしてしまう。でもその事は、口には出さなかった。  僕は母親に、友達の家に泊まると連絡をした。さすがに無断外泊なんてしたら、鬼の如く怒り出すだろう。連絡をし終えると、神近君が「夕飯にしますか?」とテレビ画面から視線を僕に移す。  気づけば日はとっぷり暮れていて、お昼を食べていなかった僕は急激な空腹感が襲いかかってきてしまう。  僕が素直に頷くと、神近君が「有り合せでしか作れませんけど」と言って立ち上がり、キッチンへと行ってしまう。僕も慌てて追いかけるも、何をしていいのか分からず立ち尽くした。  僕は炒飯以外の料理が作れない。すべて母親任せにしてきたツケが、早い段階で回ってきてしまったのだ。

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