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「訪問」14
「……ドア開けて中に入ってこられても困るんですけど」
「えっ……でも……」
これじゃあ、八方塞がりだ。戸惑う僕の腕を神近君は引くと、部屋に連れ戻される。
「泊まっててください」
「えっ?」
僕は驚いて目を見開く。神近君は僕とは目を合わせようとしないで、居心地悪そうに視線を下に向けていた。
「でも……僕なんかといて嫌じゃないの?」
「逆に先輩はどうなんですか? 俺といたら、こんなんばっかですけど」
神近君の茶色の瞳が、やっと僕に向けられる。ここでの答え次第で、今後の神近君との関係が変わってくるように思えてならなかった。怖いし、内心は今すぐにでも帰りたい。できることなら瞬間移動で帰りたい。でも神近君との関係をこれ以上悪化させるのも嫌だった。
「僕は……嫌じゃないよ。だって神近君なら僕を守ってくれるでしょ?」
真剣な表情で神近君に告げてから、僕はハッとして失態に気づく。これじゃあまるで、神近君に頼り切っているようじゃないか。僕は全身が沸騰したかのように熱くなった。
「やっ……ちがっ……」
僕が慌てて訂正しようにも、神近君はきょとんとした後に、お腹を抱えて笑い出す。
「先輩面したり、甘えてきたり……ほんと、先輩って面白いですね」
神近君はそう言って笑い続ける。そのあどけない表情に、僕の緊張も緩んでいく。
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