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「嫉妬」17
校舎までの道中で、神近くんは僕の腕をきつく引いては黙り込んでいた。僕もなんと声をかけて良いのか分からず、少し痛む腕を堪えつつ腕を引かれていく。
やっと下駄箱のところで腕を放され、「鐘島先輩についていかないでくださいね」と言い残すと、神近くんは部室に鍵をかけに戻ってしまう。
泰明と鉢合わせにならないかと僕がハラハラしながら下駄箱で待っていると、神近くんが息を切らし走って戻ってくる。
「泰明は?」
「いませんでした。生徒会室にでも行ってるんじゃないんですか」
神近くんはそう言ったっきり、自分の学年の下駄箱に行ってしまう。泰明に会わなかったことにホッとした反面、どう言い訳をするかが問題だった。
さっきの流れからして、僕が神近くんを優先したことは見ていて分かっただろう。もういっその事本当の事を言ってしまうべきなのだろうか。変に誤解されるよりかは、潔く白状した方が泰明の溜飲も下がるように思われてならない。
僕はそう結論付けると、靴を履き替え校舎を出る。むわっとした熱気と、強い日差しに思わず掌で目元に影を作る。
掴まれていた腕の部分が少し赤みを帯びっていて、ジンジンとした痛みに手でさすった。
「すみません……痛かったですか?」
神近くんが僕の腕を取ると、赤くなったところを指先でなぞっていく。
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