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「嫉妬」31
「洗い物は僕がするから」
神近くんも僕の後に続くように、キッチンに食器を運んでくる。先手を打つように僕は蛇口から水を出して、スポンジを手に取った。なんでもかんでも神近くんにやらせるわけにはいかない。
「先輩、洗い物出来るんですか?」
「出来るにきまってるじゃん」
いつもの感じの神近くんにホッとするも、少しイラっとした。
「皿割らないでくださいよ。そんなに替えがあるわけじゃないんですから」
「もうっ、うるさいな!」
僕は泡だらけの手で神近くんを追い払うと、「手を振らないでくださいよ! 泡が飛ぶじゃないですか。やっぱり考えなしの馬鹿ですね」と言って神近くんはティッシュで床を拭いていく。
姉と同じやり方で追い払おうとした事に気づき、やっぱり姉と同じ血が流れているんだと思うと少し可笑しかった。
「何笑ってるんですか」
「別に、何でもないよ」
そう言いつつも、僕は可笑しくて仕方がない。小さく笑っていると、神近くんが後ろから僕の腰に手を回す。
驚いて危うく食器を落としそうになった僕が抗議の目を向けると、神近くんが悪戯っぽい笑みを浮かべていた。
「ほら、早く終わらせてください」
「そう言うなら、向こうに行っててよ」
「見てないと皿割りそうじゃないですか。床とか水浸しにしそうですし」
「神近くんがそうしている方が、皿を割りそうなんだけど」
まるで猫みたいだなと僕は、こっそり苦笑いを零す。
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