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「計画」10

「でもそういうところもひっくるめて、神近くんの事好きなんだと思う。だって僕、初恋は女の子だったからさ」  そう言って僕は神近くんに少し体を寄せる。狭いベッドの上は、ちょっとズレただけで体が触れ合う距離になった。  僕は神近くんの胸元に顔を寄せると「神近くんだからかなぁ」とポツリと呟く。どう考えてみても、同性を好きになった理由は分からなかった。 「……暑いんですけど」 「僕もだよ」 「じゃあ離れればいいじゃないですか」  僕は神近くんの腰に腕を回すと、わざとらしくギュッと力を籠める。押しのけられるかと思っていたけど、神近くんは離れろとは言ってこず諦めたように息を吐き出すだけだった。  怒られない事を良いことに、神近くんの少し早い心音と静かな胸の起伏に僕は身を委ね、静かに瞼を閉じた。  翌朝。部屋中に漂うトーストの焼ける匂いに促され、僕は目を覚ました。神近くんはすでに起きていて、朝食を作ってくれているようだ。 「甘えてばかりでごめんね」  優雅な朝食を口に運びつつ、僕は神近くんに謝罪の言葉を述べる。目の前には焼たてのトーストと、目玉焼きにベーコン、サラダにヨーグルトまで綺麗な器に盛られて並べられていた。 「……別に、俺も食べるんで。一人も二人もそんなに変わらないですから」  モソモソと口を動かしつつ神近くんは、テレビに視線を向けていた。

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