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「計画」9

「そんなに僕って馬鹿っぽい?」  至って真面目なトーンで言われたせいか僕は怒るに怒れず、それどころか本当は僕が馬鹿なんじゃないかと思い始めてしまう。 「そうやって真に受けるところが馬鹿っぽいです」  神近くんはそう言って少し頬を緩めると、僕の髪を撫でていく。長い指が僕の髪に触れる心地よさに、僕はうっとりとして神近くんを見つめる。 「逆に、先輩は俺のどこが好きなんですか?」 「神近くんもそういう事、聞くんだね」 「別に……先輩が先に聞いて来たからじゃないですか」  神近くんの拗ねたような口調に、僕は思わず苦笑いが零れる。 「綺麗だったから――」 「え?」 「神近くんの事、綺麗だなって思ったんだ……」  僕は急に込み上げてきた羞恥心に、言葉尻が萎んでいく。 「先輩って面食いなんですか?」 「否定は出来ないかな……でもそれだけじゃなくて、神近くんって口は悪いけど優しいし……」 「口が悪いは余計じゃないですか」 「だって本当の事じゃん」  決まり悪そうな表情で、神近くんは黙り込んでしまう。

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