135 / 259
「計画」9
「そんなに僕って馬鹿っぽい?」
至って真面目なトーンで言われたせいか僕は怒るに怒れず、それどころか本当は僕が馬鹿なんじゃないかと思い始めてしまう。
「そうやって真に受けるところが馬鹿っぽいです」
神近くんはそう言って少し頬を緩めると、僕の髪を撫でていく。長い指が僕の髪に触れる心地よさに、僕はうっとりとして神近くんを見つめる。
「逆に、先輩は俺のどこが好きなんですか?」
「神近くんもそういう事、聞くんだね」
「別に……先輩が先に聞いて来たからじゃないですか」
神近くんの拗ねたような口調に、僕は思わず苦笑いが零れる。
「綺麗だったから――」
「え?」
「神近くんの事、綺麗だなって思ったんだ……」
僕は急に込み上げてきた羞恥心に、言葉尻が萎んでいく。
「先輩って面食いなんですか?」
「否定は出来ないかな……でもそれだけじゃなくて、神近くんって口は悪いけど優しいし……」
「口が悪いは余計じゃないですか」
「だって本当の事じゃん」
決まり悪そうな表情で、神近くんは黙り込んでしまう。
ともだちにシェアしよう!