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「帰省」18

 手伝いを終えた僕はお風呂を済ませ、神近くんの部屋に向かうことにした。まだ寝るにはいつもより早い時間だったし、案内された六畳ほどの和室も一人では寂しく感じてしまう。  神近くんの部屋の襖に声をかけて、僕は静かに開く。神近くんはすでに布団を敷いてその上に何も掛けずに、腕で目元を覆い寝てしまっていた。  残念だったけど起こすのも悪いと思った僕は、近くにあったブランケットをかけると、こっそりと部屋を後にする。長距離の移動と、久々に会った家族に対して神経を使ったせいなのか相当疲れているようだった。  神近くんの家族はみんな良い人たちだ。神経をすり減らすような家族には見えないのに、何がそんなに神近くんを追い詰めているのか検討が付かない。  あてがわれた部屋に戻った僕は、一人にしては広すぎる部屋に怖気付いていた。とりあえず布団を敷いて横にでもなれば寝れるだろうと、用意してあった布団敷き始める。  電気を消して静まり返っている部屋の天井を見上げ、あっという間に過ぎ去った日々の出来事に思いを巡らせた。  出会って一ヶ月。付き合って数週間。まさかこんなスピード感に溢れた恋愛を経験するとは思ってもみなかった。

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