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「帰省」23

 まだぼんやりと青白い光が差す早朝。僕はふと目を覚まして、体を起こしていく。隣に寝ていたはずの神近くんの姿はなく、布団も綺麗に片付けられていた。  スマホを見ると時刻は朝の四時半。眠い目を擦りつつ、簡単に着替えをすませると部屋を後にする。  神近くんが部屋に戻っているのかと覗いてみるも、部屋にはいなかった。どこに行ったのだろうかと不安に駆られつつ、再び静まり返っている廊下を歩いているとお母さんと出くわした。 「おはようございます。神近くん知りませんか?」 「あら、おはよう。早起きねー。智代、部屋にいないの?」  お母さんはびっくりしたような表情から、神近くんの話に変わると不思議そうに首を傾げる。 「見に行ったのですが、居なかったです」 「んー。もしかしたら向こうに行っているのかもしれないわね」  向こうとはきっと神社の事だろう。かつては神社を継ぎたいとまで言っていたようだし、もしかしたら懐かしさから心境に変化があったのかもしれない。 「それならちょっと見てきます」  僕はそう言ってお母さんと別れると、洗面所で身支度を整えてから一人で神社へと向かう。

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