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「帰省」24
冬とは違って五時過ぎはすでに明るい。夏場といっても涼しく感じられ、都内とは違った湿り気の帯びた土の匂いを嗅ぎつつ、僕はのんびりとした足取りで歩みを進めていく。
ふと、自分の向かい側から自転車に乗った警察官が、こちらに向かって近づいてくるのが見えた。
そのまま通り過ぎていくかと思いきや、その警察官は速度を落とすと何故か僕の目の前で自転車から降りたのだ。僕は補導されてしまうんじゃないかと、何も悪いことをしてい
ないのに身構えてしまう。
「あれ、佐渡くん。こんな朝早くにどうしたの?」
聞き覚えのある声によくよく顔を見ると、神近くんのお兄さんだった。まさか警察官だ
とは思ってもみず、僕は驚いてしどろもどろになってしまう。
「えっ……え、えっと……神近くんを探しに神社に行こうかと思って……」
「そうなんだね。それなら途中まで一緒に行こう」
「え……でも……」
制服を着ているということはまだパトロールの真っ最中ということだろう。僕の戸惑う様子に、お兄さんは困ったような表情で頬を緩めた。
「まだ人通りの少ない時間に、高校生が一人で歩いているのは心配だからね。これも立派な務めだから気にすることはないよ」
僕に気を使ってくれたのか、お兄さんはそう言いつつ自転車の向きを来た方向へと変えてしまう。断る理由もなく、僕は小さく頷いた。
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