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「帰省」28
「でも……やっぱり、神近くんの家族にも迷惑掛かっちゃうからやめとこうかな……」
昨日は帰ると言って今日になってやっぱりいたいです、とは言いづらい。それに、やっぱり神近くんを騙すのは気が引けてしまう。
「俺の実家なんで別に気を使う必要はないですよ。父も昨日、お祭り来ないのかとしつこく聞いてきたぐらいなんで」
「でも……神近くん、あんまり乗り気じゃないみたいだし……」
「先輩が行きたいなら付き合いますよ」
さらりと言った神近くんに、僕はぎゅっと胸が苦しくなる。
お兄さんの言葉が頭の中を逡巡していく。知りたいようで知りたくない、どっち付かず
な感情が、振り子の如く左右に揺れていた。
お兄さんは別れ際に、神近くんの嘘を鵜呑みにしていただなんてと言って目を丸くしたのだ。神近くんは本当は見えないのに、迷惑をかけたようで申し訳ない。全てを話すから時間を作って欲しい、と僕に続けざまに謝罪してきた。
神近くんを信じると心に決めていたはずなのに、僕はその言葉に酷く動揺してしまった。それが本当ならば、今までの出来事が全て嘘になってしまう。もしそうだとしたら、
どうしてそんな真似をしているのか理由がわからない。
困惑している僕にお兄さんは「夜勤明けで午後には確実に家に戻れる。もしも、それまでいるのであれば全てを話すよ」とまるで哀れむような目で僕を見つめてきたのだ。
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