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「虚像」2

 幼稚園の制服を着た神近くんが、小学生ぐらいのお兄さんと砂遊びしている写真。近所の友達と一緒に浴衣を着て、満面の笑みを浮かべてピースしている写真。神近くんの小学校の入学式で、中学の制服を着ているお兄さんと並んでいる写真。  ほとんどがお兄さんとの写真だったけど、神近くんが写っている写真はどれも飛びっきりの笑顔をカメラに向けていた。  幼少期から少し猫目で気が強そうには見えるけれど、鼻筋や輪郭は今と変わらず整っている。小さい頃は黒髪ということは、地毛ではなくて自分で茶色に染めたのだろう。 「小学校低学年ぐらいの時かな。智代が変なこと言い出して、僕が咎めたのをキッカケに距離が開き始めたんだ」  そう言ってお兄さんはアルバムをパラパラと捲っていく。他は全てお兄さん一人だけの写真のようで、最後は警察学校卒業式の集合写真で終わっていた。 「最後に二人で撮ったのは、智代の小学校入学式かな。入学してしばらくしてから、智代が変なこと言い出し始めて……」  お兄さんが小さく息を吐き出すと、まるで憐れむような目でアルバムを見つめる。 「友達の背後にお爺さんがずっと付いて来ているとか、教室の窓から女の人がへばりついてるってね」  僕はゾッとして、瞬きをするのも忘れてお兄さんを凝視する。

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