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「虚像」4

「でも……僕には、そこまでする理由が分かりません」  数々の怪奇現象。体調を崩してまでしてくれた除霊。そのどれもが嘘だと言うのだろうか…… 「智代は寂しかったんだと思うよ。こっちで友達も少ないしね。上京すれば周りは自分の事を知らないから、それをいい事に昔みたいなことを言い始めたのかもしれない。人との接点を作るのに、まさか霊が見えるって言うなんてーー」  お兄さんはスッと冷めた顔になると、「まるで詐欺師みたいだよね」とぽつりと言った。  僕はショックで口をぽかんと開けて、お兄さんを見つめる。どっちが正しいとか間違っているのか、考えようにも混乱していて頭の中が真っ白だった。 「君にも面倒かけたね。せっかく仲良くしてくれていたのに、こんなこと話すのは心苦しいんだけどね」  お兄さんは同情するように眉を下げている。 「智代の嘘につき合わせちゃってごめんね。僕から智代に言って聞かせるから」 「……いえ、結構です」  僕は絞り出すように、それだけは言った。本当はいろいろ言い返さなきゃいけないはず。神近くんを信じると決めたはずだったし、神近くんも僕を信用していると言ってくれている。それなのに僕は内心、ひどく動揺してしまって言葉は出てこなかった。

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