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「虚像」17

「自分が見えないのが、気に食わないんじゃないんですか。神社の長男としての素質がないと思って、俺に嫉妬しているのかもしれません」  神社に向かう道中。神近くんが僕のさっきの発言の答えを口にする。 「でも……お父さんもお母さんも見えないんでしょ? 見えなくたって別に神主になれないわけじゃないのに……」 「兄はああ見えて、実際はプライドが高いですからね。警察官になったのだって、この村で信頼や尊敬の目で見られたいからです。外面だけは良いんです。あの人は」  そう言いつつも神近くんは、淡々と話しをしていく。 「そうなんだ……人は見かけによらずだね」  僕はしんみりとした気持ちで口にする。確かにニュースで犯人についてインタビューされた地域住人や友人は、皆口を揃えて「あの人がそんな事をするようには見えない」「礼儀正しくて、誰にでも親切だった」と言っているのを目にしたことがあった。 「先輩は見た目も中身も単純で、変わらないですけどね」  どこか飄々とした様子で神近くんは言った。 「そんな事ないよ! 僕だって、もしかしたら悪いことするかもしれないじゃないか!」 「そうやってムキになって言っている奴に限って、何もできないから大丈夫です」  神近くんが馬鹿にするように笑っているのを、僕は軽く睨み付ける。

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