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「久遠」2
「えっ? どうしたの?」
驚いて神近くんに近づくと、「先輩こそ、何をしてたんですか」と聞き返してくる。
「僕は今日で帰っちゃうから、今までのお礼を言いに来たんだよ」
「そうですか。起きたら先輩がいないから、迷子になったかと思いました」
「なんでよ! 家の中で迷子になるわけないじゃん!」
言い返すと、神近くんは「朝から元気ですね」と言って呆れたように本殿に向かって歩いていく。僕も後ろから追いかけていくと、神近くんも賽銭箱の前に立って小銭を入れるなり手を合わせて目を閉じた。
僕はその姿を黙ってじっと見つめる。神近くんは一体何をお願いしているのだろうか。どこか真剣な横顔に、僕は目が離せなくなってしまう。
「そんなじろじろ見ないでください」
神近くんが目を開くと、僕に視線が向けられる。
「何をお願いしたの?」
「秘密です。普通は祈願したことを口にはしないですから」
「確かにそうだけど……」
それでも気になってしまう僕は、石階段を降りていく神近くんの後を追いながら胸をモヤモヤさせていた。
朝日が眩しいぐらいに顔を照らしつけてきて、思わず手を前に出す。
「まぁ、先輩と似たようなこととだけ言っておきます」
「へっ?」
不意を突かれ、間が抜けた声が出てしまう。似たようなこととはなんだろうか。余計に分からなくなってしまう。僕が疑問を顔に浮かべても、神近くんはそれ以上は教えてはくれなかった。
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