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「久遠」17

「それでも大変な時に頼れない状況を作ったのは、神近だろ。大変な時に傍にいてやらないなんて、俺だったら絶対にしない」  泰明がちらりと僕の方を見て、再び視線を神近くんに戻す。まるでお前はどうなんだというように、神近くんに視線を投げかけている。 「……俺が全面的に悪いです。先輩に辛い思いはさせないって息巻いときながら、こんなことになったのは俺がちゃんとしていなかったからです。だからといって、先輩は渡せません」  神近くんはぐっと噛み締めた唇を開いてきっぱりそう言い切ると、泰明の脇を抜けて僕の腕を掴んだ。 「お世話になりました。後は俺が先輩を守ります」  腕を引かれて立たされた僕は突然、神近くんに抱きしめられる。 「え、えっ、ちょっと、かみち――」 「先輩……すみません」  泰明の手前、体を離そうとするも神近くんはぎゅっと抱きしめてきて身動きがとれない。 救いを求めるように泰明の方を見ると、苦笑いを零してこちらを見つめていた。 「神近くん。分かったから離して」  神近くんの背を優しく叩いて促すと、やっと神近くんの体が離れていく。 「神近、次はないからな」  泰明の言葉に神近くんは頷いた。僕はどういう顔をしたらいいのか分からず、ただ二人のやり取りを見つめるだけだった。

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