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「久遠」16

「ありがとう……」  泣きそうになりながら僕が言うと、泰明は困ったように僕の肩を叩く。 「本当だったら、あいつをかばう必要なんてないんだけどな。でもお前が辛そうにしてるほうが、俺は耐えられない」  僕は良い親友が持ててよかったのだと心から思った。僕だったら泰明みたいに、気の利いた事なんて言えないだろう。 「先輩!!」  生徒会室の扉が開いて、神近くんが息を切らしつつ中に入ってくる。 「なんで、鐘島先輩とこんなとこにいるんですか? しかも距離も近いんですけど」  険しい表情で僕たちに近づいてきた神近くんをけん制するように、泰明が立ち上がって僕の前に立った。 「なんの真似ですか? 保護者ごっこはいい加減止めてもらえません?」  今にも噛みつきそうな勢いの神近くんに、泰明は臆した様子もなく口を開く。 「なんでこんな事になってるか、わかるか?」  神近くんは黙って僕の方に視線を向け、眉根を寄せた。 「佐渡の家に、お前が言ってた女が来たんだ」 「……えっ」  さすがの神近くんも唖然として、言葉を失っていた。 「なんで危ないって分かってて、こいつを一人にしたんだ? お前が最初に言い出したことだろう? 最後までちゃんと守れないんだったら、恋人失格だ」  泰明の言葉に、神近くんは悔し気に視線を俯かせた。 「泰明……僕が神近くんに送っていかなくって良いって、言っちゃったんだ」  さすがに見てられなくて、僕は泰明の腕をそっと引いた。

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