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「久遠」15
「それぐらいの覚悟がないのに、ずっと一緒にいようなんて言えるわけだろう。アイツにそれだけの意思があるのか?」
なんと答えれば良いのか分からず、僕は黙り込む。僕だったら家族を捨ててまで、神近くんと何処かに行こうと思えるだろうか。時々、家族のことをうるさいとか厄介だと思うこともあるけれど、大切じゃないわけじゃなかった。
「でも……僕だって悩んでる。家業とかしてないけど、それでも迷ってる」
「お前は家族を信じてないのか? お前の家族は息子の好きな人を否定するような家族なのか?」
確かに泰明の言うとおりだった。自分の身よりも息子の身を案じている母。いつもは怖いけど、いざという時には頼りになる姉。僕のために仕事を頑張っている父。そんな家族が僕の意思を完全否定するとは思えなかった。
僕が首を横に振ると、泰明が「じゃあなんの問題ないだろ」と言って少しだけ表情が緩んだ。
「あいつの家族だって、兄はちょっと厄介かもしれないけど、両親は良い人なんだろう?佐渡に色々と世話を焼いてくれたみたいだしな。焦る必要もないんだから、ゆっくり納得してもらえばいいんじゃないのか」
「泰明……」
神近くんに良い印象を持っていない泰明が、そんな風に言ってくれるのは泰明が根っから優しい性格だからだろう。
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